骨造成手術を併用した治療
インプラントによる治療のためには、埋入手術が可能でしっかりとインプラントを支えられる健康な顎骨が必要です。顎骨に充分な厚みや高さがないと、インプラントが骨を貫通してしまったり、うまく結合せずに脱落してしまうリスクがあります。
こうした顎の骨量が足りないケースでも、骨造成手術を行なって、インプラント手術を可能にできる場合があります。
患者さまの治療部位や口腔状態によって、さまざまな骨造成手術からより適した処置をご提案します。手術時は、歯科麻酔医が生体モニターで全身状態を適切に管理しながら実施します。安定した顎骨で支えるインプラントは、寿命も長くなります。
骨造成手術は、全身疾患などをお持ちの方には適さない場合もあります。
サイナスリフト
上顎の内部には、サイナス(上顎洞)という空洞があります。サイナスリフトは、上顎の骨に充分な厚みがなく、インプラントが上顎洞まで貫通する危険がある場合に適応します。
歯肉を切開して、上顎洞を覆っているシュナイダー膜を骨から剥がし、その間に骨補填剤を詰めて骨量を増やします。半年ほどで骨は安定し、インプラントを埋め込めます。
ソケットリフト
増やしたい骨量が少ない場合には、ソケットリフトを適応します。インプラント手術と同日に行なえる処置です。
インプラントを埋め込む穴をシュナイダー膜が傷つかないようにあけ、骨補填剤を入れて押し上げてから、インプラントを埋入します。
骨が造成されインプラントが固着するまで4〜5ヵ月ほど待ってから、人工歯を取り付けます。
骨移植
顎骨の厚みが足りないと、インプラントの上部が露出してしまう可能性があります。そうした場合には、患者さまご自身の骨を移植します(骨補填剤を使うこともあります)。骨移植は、おもに上顎の前歯部や下顎などに適応します。
歯肉を切開して骨を移植しピンなどで固定したら縫合して、定着するまで半年ほど待ちます。
軟組織移植
歯肉などの軟組織が退縮すると、歯と歯に隙間ができたり歯が長く見えたりし、インプラントが歯肉からはみ出てしまう危険性もあります。
不足している歯肉を補うためには、患者さまご自身の口蓋部などから軟組織を採取して、移植する方法があります。人工膜を使用することもあります。
口元の審美的な問題も改善できる処置です。
All-on-6
通常1本の歯の代わりに、1本のインプラントを埋入しますが、総入れ歯など、多くの歯を失ってしまった場合には、All-on-6(オールオンシックス)という方法を用います。
例えば上顎の歯がすべてない場合には、12本の人工歯を6本のインプラントで支えます。
患者さまの体への負担が少なく、治療期間も短く済みます。
即時荷重インプラント
従来のインプラントによる治療では、埋入したあとに顎骨と結合する期間を数ヵ月おいて、負荷をかけないようにします。
即時荷重インプラントは、埋入手術後にすぐ仮歯まで設置して、当日から噛むことができる方法です。
歯が欠損したままにならないので、食事に支障がなく、見た目も気にならない方法です。顎骨の量が充分にあることが必須です。
インプラントによる治療の一般的なリスク・副作用
- ・機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
- ・インプラントの埋入にともない、外科手術が必要となります。
- ・高血圧症、心臓疾患、喘息、糖尿病、骨粗鬆症、腎臓や肝臓の機能障害などがある方は、治療を受けられないことがあります。
- ・手術後、痛みや腫れが現れることがありますが、ほとんどの場合1週間ほどで治ります。
- ・手術後、歯肉・舌・唇・頬の感覚が一時的に麻痺することがあります。また、顎・鼻腔・上顎洞(鼻腔の両側の空洞)の炎症、疼痛、組織治癒の遅延、顔面部の内出血が現れることがあります。
- ・手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気副作用が現れることがあります。
- ・手術後、喫煙や飲酒をすると治療の妨げとなるので、1週間は控えてください。
- ・インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、噛み合わせ、歯磨きの技術、メンテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
- ・毎日の清掃が不十分だった場合、インプラント周囲炎(歯肉の腫れや骨吸収など)を引き起こすことがあります。